冬ごもり
古文を書く試み。
2011年3月2日水曜日
甕よりつき出で
若君幼くておはするほどに、甕は胸ばかりの丈にて見たまふ。中を覗けば、をのこの腿ばかり、大きなる鯉、われ猛しげにぞ泳ぎゐたる。およびだに差し入らば食はれなむともおぼえむかし。日も暮れなむとすれば、甕の底のあやなどもさやかならずおぼろけにてくらくらと揺ればあやしう、物に酔ひたる心地ぞしたまふ。しばし身じろきもせで見ゐたまへるに、にはかに震ひて躍りあがり、鯉、水をつき出でて床に落ちぬ。人びとうち驚きて声あげてさわぐ。
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