はやう夏にしもなりぬるを、なほ例のこしをれどもかくなむ。
あらたまのとしたちかへる春の日はなにとすずろにうれしかるらむ
はつはるの霞たつ野に鶯のはつねをまつぞひさしかりける
見えぬままかすみへだてて鶯のなくねばかりはしるくぞありける
鶯のこゑをききつるけふよりはなほふる雪も花とこそ見め
咲きぬればちるべきものと年ごとにしるやしらずや鶯のなく
春霞なこめへだてそ風吹けばやがてあふるる花の香にこそ
きみがため若菜つまむと野にゆけば籠もみてがてに雪のふるかも
行く春に吹く山風よ心あらばなどかひとつの花も残さぬ
花散らす風をもとめてたずね行かば果てなき春のとまりやあるらむ
春ゆけばなほ鶯はなくなれど思ひなしにやうさぞそふなる
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